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2019.7.21 十日町=取手合同ゼミ

更新日:2019年8月8日

2019.7.21

知ったか大学 十日町校&取手校をつなぐ Wゼミ

(ログ担当:石渡)


知ったか大学発祥の地の十日町校と、

知ったかゼミ発祥の地の取手校をネット中継でつなぐ、

知ったか大学発のWゼミを行いました。

離れていても、同じ時間を共有できる、素敵な時代になりました。





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今回のゼミの内容はこちら。

1.「私の好きな絵本」:担当石渡(取手校)        

  各自自分の思い入れのある絵本の「絵」について紹介します。


2.十日町と芸術祭について:担当滝沢(十日町校)+佐藤  十日町の変遷と今について、ごく私的な観点からトークします。

3.取手アートプロジェクトについて:担当高木  取手アートプロジェクトの歴史を振り返ります。


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1.「私の好きな絵本」:担当石渡(取手校)


まずは、十日町校と取手校の参加メンバーの自己紹介も兼ねて、

自分の好きな絵本を紹介するコーナーから始めました。

今回のポイントは、絵本を物語ではなく、「絵」という観点から選ぶこと。


このテーマをゼミでやってみようと思ったのは、

3歳になる私の子どもの存在がきっかけでした。

毎日眠る前に、子どもと絵本を読みます。

好きな本を子どもに選んでもらうのですが、

子どもを通して絵本と出会う毎日を通じて、あることが分かってきました。


まずは、小さいながら、子どもにも好きな本、

好きなお話、好きな絵があるのだということ。

そして、絵本は子ども向けに作られたものだけれど、

その絵はひとつのアート作品として面白いものがたくさんあること。


子どもは、その愛おしさ故に限りなく自己に近い存在なのだけれど、

確実に私とは別の人格を持った他者であり、

まだ多くの考えに縛られない自由さも持ち合わせていると感じています。


だから、子どもを通して「鑑賞」することにより、

自分では思いもよらなかった視点が与えられ、

私自身の「鑑賞」、もっと切り込んだ言い方をすると、

「ものの観方」も変わってくるかもしれないなと考えました。


その第一歩として、子どもの一番身近なアートである絵本を

「絵」で観るということをゼミの皆さんとやってみたくて、

このコーナーを企画しました。



今回は、7名のゼミ生に絵本を紹介していただきました。

各自、自分の言葉で紹介して頂いたほうが面白くなると思い、

紹介文を作成してもらいました。


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発表者:ゼミ生 石渡(取手校)

紹介物:「かばくん」福音館書店



内容:

動物園でいちばんのねぼすけ、かばくんとちびのかばくん、

お友だちのかめくんのある日曜日を描いた一冊。

子どもがこの本が大好きで、私もじわじわとその魅力にはまりました。

絵として面白いなと思ったのは、背景の色合いにより、時間の経過を表しているところ。


柔らかな光の差し込む朝の動物園、

かばくんが大きなお口を開けてごはんを食べるお昼、

お腹いっぱいのかばくんがまどろむ昼下がり、

お友だちのかめくんとさよならする夕方。

動物たちが眠りにつく夜。


複数の絵を見比べて、時間の経過を味わうことができるのも

「絵本」という作品形態ならではだと思います。


参考サイト:

福音館書店 かばくん https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=61

作者の中谷千代子さんのご紹介 https://www.fukuinkan.co.jp/blog/detail/?id=239


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発表者:ゼミ生S(取手校)

紹介物:「イメージの魔術師 エロール・ル・カイン」画集 ほるぷ出版


内容:

私が今回選んだ本は絵本作家エロール・ル・カインの画集です。

日本ではさくらももこさんがエッセイの中で紹介し、広く知られるようになりました。


フランス系カナダ人とトンガ人の血を引き戦争を避けるため、

インドで暮らした経験があり、独特の美的感覚がとても魅力的な絵本作家です。


とにかくこの人の絵は変幻自在、和洋折衷。

細部までこだわりぬいた画面は飽きることなくいつまでも眺めていられます。

小さい子向けの絵本のような単純さは無いですが、

大人が長く楽しめる絵本をたくさん作っています。


NAVERまとめ

大人が読みたい絵本[エロール・ル・カインの世界]


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発表者:ゼミ生K(取手校)

紹介物:タラブックス


内容:

タラブックスはインドの小さな出版社です。

紙漉き、印刷、製本まで熟練の職人が手掛けるハンドメイドの絵本は、

美術品とも称され世界的に評価されています。


インドの民族的な絵や文はもちろん、手にした時に感じる手触りや重み、香り。

まさに五感で楽しむ絵本です(食べられないけど)!


刷を重ねる度に表紙が変わり、シリアルナンバーも入っているので、

ファン垂涎、なんとも所有欲を刺激されます。


特に「夜の木」は人気で

「世界のはじまり」「水の生きもの」「太陽と月」など日本語版も出版されています。

東京アートブックフェアへの出店や展覧会も開催されていますので、興味のある方はぜひ。一見の価値ありです。


参考サイト:

タラブックス https://tarabooks.com

東京アートブックフェア https://tokyoartbookfair.com/

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発表者:佐藤悠 紹介物:「エルマーの冒険(の裏表紙)」副音館書店



内容: 正直、この本が!ということではなく、

絵本にたまにある「裏表紙の作り込み」について紹介したくて選びました。


表紙の裏の部分は、ときどき本文の物語を補強、拡張する情報が書かれていたりします。「エルマーの冒険」では、主人公が冒険した道筋を紹介する地図が描かれていますが、

そんな情報に胸躍らせていた子供の頃を、今回発表に関わる中で思い出しました。


他にも、「かいけつゾロリ」シリーズの作者原ゆたかさんなんかも、

裏表紙の作り込みにいつも気を使われていて、とても心惹かれます。

参考サイト:

エルマーシリーズ https://www.fukuinkan.co.jp/ninkimono/detail.php?id=4 かいけつゾロリシリーズ https://www.poplar.co.jp/zorori/ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


発表者:高橋(十日町校) 紹介物: 『バムとケロのおかいもの』『バムとケロのにちようび』島田ゆか 文渓社

内容: 自分の子ども時代を振り返ったとき、一番絵をみてわくわくした絵本です。

驚くべきは細部まで描きこまれた世界観。

こども向けの絵本というのは線が単純化されていたり、

背景が省略されていてキャラクターの動きを分かりやすくしたものも多いけれど、

この本の場合、どんなに小さな小物ひとつとっても、ディテールも一切妥協がなく、

絵本のなかの世界に引き込まれる。


その徹底的な描写が、

愛嬌あるバムとケロのコンビのキャラクター性をより際立たせてくれていて、

まるで映画をみているような気分で読み進められます。

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発表者:ゼミ生A(取手校) 紹介物:自殺うさぎの本(原題:THE BOOK OF BUNNY SUICIDES)     青山出版社(Hodder & Stoughton, Ltd)

内容: とにかくありとあらゆる方法で自殺しようとするうさぎが描かれた絵本。

とぼけた顔のうさぎが死ぬために一生懸命生きている姿が印象的。

ペン画で色彩のないページが続くが、

色を付けるときっと前頁真っ赤に染まっているのだろう。

文字はなく、1ページごと描かれた情景から前後を想像する楽しみがある。

死ぬ方法はいくらでもあるのに、とことん迂遠な方法を考え実行する様子が、

現代社会をアイロニカルに表現しており、私の感性と通じ合うところがあった。

死を扱った絵本では、エドワードゴーリー「おぞましい二人」や

谷川俊太郎・松本大洋「かないくん」なども絵が印象的。

参考サイト: 自殺うさぎの本

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発表者:高木(取手校)

紹介物:ぽぱーぺぽぴぱっぷ/谷川俊太郎さんのあかちゃんから絵本

おかざきけんじろう・絵 谷川俊太郎・文



内容:「あかちゃんの環世界を覗き見る」

この本はタイトルのように主に「ぱぴぷぺぽ」の音によって構成されています。

また、美術家であるおかざきけんじろうの絵は

一つ一つの物が画面からはみ出る程大きく描かれており、

その中をヘンテコなものたちがあっちやこっちにいく内容です。


声に出して読み聞かせすることを前提に書かれており、

あかちゃんに向けて作られた絵本です。


私がこの絵本の好きな所は

「読むことであかちゃんの世界を感じることができる。疑似体験のような感覚を持てる」

という所です。


この絵本では言葉や形はまるで取り囲む視界や音を顕微鏡で覗いたように、

5つの音と単色で組み合わされた形で表現されます。


単語の音は分解され、破裂音の羅列になり、

視界はピクセルが少なくなった、低い解像度、画素数のドットのような世界です。

成長すると処理能力が上がり、音は言葉になり、視界は奥行きのある世界になります。

この絵本はあかちゃんを取り囲む世界そのものであり、

読み手である大人はその一片を覗き見しているのかなと思います。


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発表者のみなさま、ありがとうございました。

子どもの絵本からスタートした発表でしたが、

ゼミ生の絵本の捉え方がさまざまで、

「絵本」の概念が大きく拡張されていったのが面白かったです。

絵本の楽しみが増えていきそうです。


個人的な感想として、今回の発表を通じ、

「アート作品と言葉」というキーワードが私の中に残りました。

絵本は、絵と言葉という2つのメディアを通じて表現できるという面で


特殊な表現手段だと改めて感じます。そして、紹介された絵本の一冊の作者である、

岡崎乾二郎さん(https://kenjirookazaki.com/jpn/)は現代美術家であり、

あえて意味のないタイトルをつけた作品を作っている事なども

ゼミの中で話題になりました。


アート作品を鑑賞する時、

タイトルを観たり、タイトルとともに書かれた「解説文」を読んだりして、

作品のイメージが「言葉」に引っ張られてしまうことはありがちだと思います。

作品から感じたことを表現する最もシンプルな方法、

「感想を述べる」ことも「言葉」による表現です。


知ったかゼミでは言葉による表現を超えていく

「身体話型鑑賞」なども今まで実施してきました。

言葉ですべてを表現できないからこそ、アート作品が生まれていると思いますが、

そこにあえて「言葉」というメディアを結び付けたらどうなるか。


矛盾するようですが

「言葉から自由になって、言葉を使う」ということを

アートを通じて考えてみたいなと思いました。


 

2.十日町と芸術祭について:担当滝沢(十日町校)+佐藤


知ったか大学発祥の地の新潟県十日町市は、

「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」

http://www.echigo-tsumari.jp/)の舞台でもあります。

大地の芸術祭は、2000年より3年に1度、

新潟県十日町市周辺で開催されている国際的な芸術祭です。


7回目となった2018年は、来場者54万人を記録。

今でこそ、多くの地域で開催されている芸術祭ですが、

大地の芸術祭はその先駆けであり、継続して成功を収めているプロジェクトです。


大地の芸術祭の里、十日町校のメンバーであり、

十日町市でアーティストなど、「何かを作りだしたい人」のためのシェアスペースasto(http://asto-t.jp/)を運営している滝沢さんが、

知ったか大学学長の佐藤悠さんと十日町市の今までとこれからのこと、

いろいろお話してくださいました。


【芸術祭が始まってからのまちと人の変化】

 芸術祭が開催されるようになり、

最初は、他の地域からきた「よそ者」、

かつ、身近でない「アート」というよく分からない存在への拒否反応がありました。


でも、今はまた面白いアーティストさんが来た、

来てくれたなら一緒に楽しもうという雰囲気があるそうです。 


芸術祭やアーティストが地域に受け入れられるようになったひとつのきっかけが、

2004年の中越地震であり、ボランティアさんなど

外部から人が入ってくること対する垣根が低くなったからだと言われています。

しかし、滝沢さんは、きっかけは、

作品を観に行った、家の近くにアーティストがやってきたなど、

個々の体験に根差していることが多いのではないか、と言います。




滝沢さんと芸術祭との関わりは、作品を観に行ったことがきっかけ。

芸術祭の舞台は開始当初、十日町市郊外の農村部が中心の試みが多くありました。

その中で芸術祭が中心市街地へ改めてアプローチした、2015年。

十日町市のまちなかでもアーティストがチームを組んで作品発表が行われました。


滝沢さんはその時に作品作りにも関わり、

観る側からともに作る側へと関わり方が変化していきました。




【芸術祭との関わりの中で生まれたこと】

2015年の芸術祭のまちなかで実施されたプログラムには美術だけでなく、

音楽に関する作品がありました

突然、まちなかに楽器を持ったミュージシャンが現れ、演奏を始める。

芸術祭の会期中、まちのどこかでそういった演奏会があって、

地域の人もだんだん加わり、一緒に演奏をする楽隊になる。

日々の演奏会の中で、「ハーメルンの笛吹き」のように、楽隊がどんどん増えていく。




時間をかけて、地域の中で育っていった楽隊は、

集大成として、まちなかのお寺さんでライブをしました

(プログラムの様子はこちらhttp://www.echigotsumari.jp/artwork/sound_dialogue)。


このプログラムには、アーティストが「自分たちがやりたいこと」ではなく、

「地域と一緒に作っていくこと」をやろうという考え方があるそうです。


「常にアートがそばにあるという環境はとてもワクワクする」と滝沢さんは言いました。

十日町市は地場産業として織物の文化があり、

今も商店街では若い世代のつながりがあります。

同年代のつながりに加え、親世代の人とのつながりなど、

世代を超えたまちの中でのコミュニケーションが

非常に身軽であるという特徴があるそうです。


地域がもともと持つ魅力が、芸術祭をきっかけとした

「常にアートがそばにあるというワクワク」と「地域と一緒に作っていくこと」を

ともなって、新しいことを始めようという機運を生んでいるのではないかと感じました。


十日町市のもうひとつの特徴は、バランスの良さだと、佐藤さんは言いました。

アートが特別なものではなく、一つのコンテンツとして存在し、

他にも十日町独自のイベントや、魅力的な場所場所作りもある。

ひとつのことに依存し過ぎない身軽さがあるそうです。


滝沢さんは、芸術祭以来、音楽ライブの企画・運営も実施しています。

また、イベントを運営していく中で、人の場所を借りることの不便さ、

運営や作品表現上での限界を感じ、

自身でコミュニティスペースasto(http://asto-t.jp/)を立ち上げました

(今回のゼミでは、十日町校の会場として使用させていただきました。)。


いざ立ち上げると、場所の運営に手いっぱいになってしまうこともあるそうですが、

滝沢さんが作った「自分で自分のやりたいことをできる場所」から、

何かがまた生まれていくことが楽しみです。


【十日町市のこれから】

芸術祭の老舗でもあり、最先端でもある、大地の芸術祭。

その舞台となってきた十日町市のこれからについて、話しました。


滝沢さんは、地元の人が自ら楽しめる輪を広げたいと言いました。

無関心な方は無関心なままで、まち全体でみるとまだまだ自ら関わる人は少なく、

これからのことを考えると人材が足りないそうです。

十日町には、芸術祭や地域の魅力にひかれ、他の地域から移住してきた若い世代もいて、

その方が地域活動の力強い担い手となっています。


知ったか大学十日町校にも、移住し、十日町で活躍するメンバーが多数います。

移り住んできた人も昔からの住民も含め、受身ではない人を増やしていく、

自ら楽しんで広げていく。

「生み出す」から「広げる」へ。十日町は、新たなステージへと向かっています。


開始から19年を経て、芸術祭の中心的な担い手の世代交代の時期も近づいてきています。

芸術祭の「初めて」を多く経験してきた十日町には、

世代を超えて続けるというまた新しい「初めて」がやってきます。

大きく変わるかもしれないという不安もあるが、

楽しみでもあるという佐藤さんの言葉が印象的でした。


 このお話の中で、「楽しむ」という言葉がたくさん出てきました。

まずは、楽しんでみる。それが大切なのかもしれません。

お話くださった、滝沢さん、佐藤悠さん、ありがとうございました。


 

3.取手アートプロジェクトについて:担当 高木(取手校)


知ったかゼミ発祥の地の取手には、

十日町とはまた違ったアートと地域の関わりがあります。

その中心となっているのは、

「取手アートプロジェクト」(Toride Art Project 通称TAP)です。


知ったかゼミの運営サポートをしてくれており、

取手アートプロジェクトのスタッフでもある高木さんが、

取手アートプロジェクトの歴史を担当したプログラムと共に振り返ります。


【はじまりと最初の10年】

取手アートプロジェクトは、1999年に開始され、

取手市、東京藝術大学、市民、の三者で始まったプロジェクト。

今年で20年になります。


発足当初の1999年から2009年は、

全国から作品プランをあるテーマのもとに募集する「公募展」と、

取手在住作家の活動紹介である「オープンスタジオ」を活動の主軸とし、

それを隔年で開催してきました。


第1回目の公募展は、「リ・サイクリングアートプロジェクト」。

放置自転車を素材とした作品を作り、まちなかに飾る、

また、市内に点在する作品を観に行く足として整備し、

レンタルするなどの取組が行われました。

これは町の課題を認識・解決する一つの方法としての側面があったと思います。



取手駅前に現れた、自転車を用いたオブジェのこと、私自身もよく覚えています。

また、ゼミ生の中には、「私、この自転車利用させてもらったことありました!」

という方もいらっしゃって、知らない間に昔からつながっていたのだと感じました。


公募展は、著名なゲスト・アーティストをお招きし、市内各所で実施。

下水処理場や学生寮の跡地や空き家、を利用した作品発表も実施されました。



(取手アートプロジェクト 「これまでのTAP」https://toride-ap.gr.jp/historyには、

各年のイベントの詳細が掲載されています。)


【次の十年、アートを日常へ】

2010年、取手アートプロジェクトは大きく舵を切ります。

今までの「フェスティバル」型から、「通年プロジェクト」型へシフト。

より長期的視野に立った取り組みを通じて、

新たな価値観をつくりだしていくことを目指していきます。


半農半芸の「10年かけて旅をする」というテーマはプロジェクトだけではなく、

これからのTAPの大いなる挑戦への想いがあったのではと思うと話されました。

イベント型のアートプロジェクトは、

打ち上げ花火のような一瞬の輝きとともに消え去る短命さがあります。

そうではなく、長い時間をかけて、資金や人材を継続的に確保し、

人々と新たな価値を作り続ける、長い旅に取手アートプロジェクトは出発しました。


そして、「アートのある団地」と「半農半芸」という

2つのコアプログラムが立ち上がります。


■アートのある団地

取手には井野と戸頭の2か所にURが整備した大規模な団地があります。

昭和40年代、高度経済成長期に首都圏近郊都市、

いわゆるベッドタウンとして住宅が整備され、人口が大幅に増加、

取手は町から市になりました。


取手の発展の受け皿となり、その歴史を見守ってきた団地が、

今度は表現を営み、人がつながる場となりました。


それが、「アートのある団地」(https://toride-ap.gr.jp/danchi)です。

井野団地の活動の中心になるのは、

「いこいーの+Tappino」(https://toride-ap.gr.jp/danchi/icoino)。

団地内の空き店舗を利用したコミュニティカフェです



その一角には、ちょっと変わったATMがあります。

これは、「とくいの銀行 井野本店」(https://toride-ap.gr.jp/danchi/fukasawa)。

お金のかわりに、自分の「とくい」を預けます。

そうすると誰かの「とくい」を引き出すことができる。

そして、とくいを貯める「ちょとく」ができる銀行です。


井野団地には、

「リカちゃんハウスちゃん」(https://toride-ap.gr.jp/danchi/miyatarika)が住んでいて(注:リカちゃんハウスではありません。「リカちゃん」という女の子と、リカちゃんが住むおしゃべりできるおうちの「ハウスちゃん」です。)、

近くの小学校に通う子どもたちや団地で出会う方々との思い出を共有しながら、

成長しています。ちゃんと子どもたちと一緒に、小学校も卒業しました。


今はお休み中ですが、井野団地はホテルにもなります。

「SUN SELF HOTEL」(https://toride-ap.gr.jp/danchi/kitazawa_ssh)です。

ホテルマンは地元のみなさんをはじめとする有志の方々。

県外のちょっと離れた場所から来てくれるホテルマンもいます。



3か月前に宿泊者を募集、まずはホテルマンが「宿泊者を決める会議」から始まります。

そして、宿泊者のお好みをうかがいながら、

ホテルマンは毎週会議を開き、おもてなしの内容を決めます。



ホテルマンに年齢制限はありません。

大人も子ども一緒にお客様が喜ぶおもてなしを考え、全力で実行します。

そのため、宿泊日当日、お客様は分刻みであらゆるおもてなしを受けるそうで



戸頭団地は、その壁がキャンバスとなって、

団地に暮らす人々の記憶を描く、ユニークな作品、

「IN MY GARDEN」(https://toride-ap.gr.jp/danchi/uehara_img)が出来ました。


小さいころからよく行っていた団地の中の図書館。

その隣の団地の壁に何やら絵が描かれていって、わくわくしました。

今でも子どもと一緒に図書館に行くと、見上げています。


■半農半芸

 「半農半芸」(https://toride-ap.gr.jp/hannohangei)は、

市内に借りている500坪の畑地を舞台に

「10年かけて旅する」をテーマに始まったプログラムです。

農業を支える地域の方々とアーティストがともに活動をすることで、

人間の生活の基盤である衣食住に新たな価値を生み出すことを試みています。

その拠点として、「TAKASU HOUSE」と「藝大食堂」が作られました。



「TAKASU HOUSE」(http://takasuhouse.com/)は、

取手市の高須地区にあった元農協事務所の建物をアーティスト自身がリノベートし、

作成した多目的スペースです。


地域で採れた菜種油のパッケージデザインをアーティストが行い、

商品化するといった試みなども行われています。



レジデンスという滞在制作を行うこともできるスペースもあり、

滞在したアーティストはTAKASU HOUSEに手を入れることになっていて、

HOUSEは今も進化中。

高須地区に住むママさんとの出会いをきっかけに始まったマルシェも好評です。



「藝大食堂」(http://geidaishokudo.com/)は東京芸術大学取手校地内にある食堂です。

2017年後期より取手アートプロジェクトが運営を受託し、

「半農半芸」の土台としています。

食堂では、地元で採れた野菜を使った、おいしいごはんがいただけます



また、東京芸術大学の小沢剛さんのプロジェクト「ショーケース」(http://geidaishokudo.com/news/)も展開されています。

以前学食のサンプルを入れるために使われていた透明のガラスケースに、

月替わりでアーティストが作品を展示する、

そしてそれに関連するイベントを食堂で実施する、

まさに食堂が表現の場となる取り組みです。



知ったか大学も昨年度は藝大食堂で講義を行いました。

「知ったか」なのに、芸術の学府の敷地内で講義を開いてしまうあたりが、

また「知ったか」らしい。そ

れくらい敷居が高くないということで、

大学の中にあるけれど誰でも入っていけるような場を作ることで、

そこに豊かさを生み出していこうという流れが感じられます。


【取手アートプロジェクトのこれから】

 「フェスティバル型」から「通年プロジェクト型」へ。変革から10年。

取手アートプロジェクトは20年を迎えました。


2019年12月には取手駅の駅ビル内に、「たいけん美じゅつ場」(https://www.atpress.ne.jp/news/186907)がオープンすることとなりました。

取手におけるアートの拠点が複数化していく中、

この施設は駅前というアクセスの利便性から、

他の施設をつなぐ役割も果たしていくと思います。


自身も試行錯誤しながら、

アートによる新たな価値の創造を模索し続けてきた取手アートプロジェクト。

限られた発表時間の中で、TAPのこと、

より多くのことを伝えたいという高木さんの想いからも

取手アートプロジェクトが見つめるその先がまだまだ広がっていることを感じました



 時間の都合上、詳細の紹介はできませんでしたが、

取手アートプロジェクトは2つのコアプログラムの他に、

「ベースプログラム」(https://toride-ap.gr.jp/baseprogram)という

日々の暮らしの中で、アートと関われる仕組みを作るプログラムも実施しています。

詳細は取手アートプロジェクトのサイトで紹介されていますので、是非一度ご覧ください。

 高木さん、ありがとうございました。


※掲載した写真は、取手アートプロジェクトからご協力いただきました。

 ありがとうございました。


 

4.これからのゼミ

 初のダブルゼミでつながった十日町校と取手校。

そこで、「これからなにか一緒にできないかミーティング」をゼミの最後に行いました。


 そして、十日町校への修学旅行を開催することが決定しました。

取手校ゼミ生が、この夏十日町に伺います!


また8月の取手校のゼミは、初のゲストスピーカーをお呼びすることになりました。

SIDE COREの松下徹(http://www.tohrumatsushita.com)さんです。

今回は知ったか大と普段ほとんど縁のないアートマーケット、

作品を売り買いする世界のことについて話をお聞きしたいと思います。


詳細はFacebookページでご案内いたします。

今回も最後までお読みいただき,ありがとうございました。

次回もご参加をお待ちしています。

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